エモこそすべて

きまぐれ書き付け

グラフィッカー×ノングラフィッカーという、ちょっとしたトライアル

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グラレコ最終段階。予想以上にいろんな方に質問を受けました。

久しぶりにグラフィックレコーディングのソロ活動があったのでメモ。

www.t-bunka.jp

 

今回は東京文化会館さんの主催によるプログラムのグラフィックレコーディングを担ってきました。

登壇者は三重大学大学院医学系研究科准教授の佐藤正之先生。認知症に対して音楽療法のアプローチを実践されています。

事前に意識したこと

・どの立場の人が、どんな話をするか
・対象者となる参加者はどんな層の方々だと予想されるか
・参加者の方にどんな影響を与えたいと考えているか
・情報を残すニュアンス、粒度、精度
・今後の活用方法

というポイント。※だいぶラフめ

主催は東京文化会館、会場は東京都美術館。まさに音楽とアートがコラボレーションした座組。そこへ医療者という別分野の専門家が話題提供をしていきます。 

グラフィックレコーディングは、こういったヒアリングをしつつ、更にその先で主催者にとっても参加者にとってもどう活きていくと良いのか?どういったコミュニケーションを生む(育む)か?という点を重要視しています。

専門性が高いセッションをどう描く?

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中盤の模様。

そこまで専門性が高くない領域、もしくは自分に素地がある領域であれば、その場で聞く・描くを同時進行していきます。(こういう入り方が80~90%ぐらい)

よくあるのはイベント公式サイトに掲載されている登壇者情報をベースに、その場で話される内容を概要から想像して、事前にリサーチをしておく、というケース。

ただし今回は登壇者が医師です。

且つ、ご自身の実践領域においてはEvidence Based Medicine(EBM)という「論拠となるデータに基づいた治療」をなさっているので、いくらビジュアルを用いて描いていくとはいえ不要な曖昧さは禁物だと考えました。

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EBMについて触れられた箇所。当たり前がバイアスになり、起きた事象と仮説が逆転しないように根拠を追究します。

というわけで今回の方向性はこちらに。

  • 情報はサマライズするため削がれていくが、ポイントとなる箇所を具体的に残す
  • 参加できなかった方々にも共有できる情報量(満席イベントでした)
  • スライドが配布資料となるため、異分野の方が飲み込みやすく理解の助けになるビジュアライズ(文字情報含む)

 描く立場としては、いただいた事前資料を徹底して読み込み、用語や背景情報をインプットしました。

先生の専門領域に対して、参加者は別の専門領域・バックボーンを持っている。しかも一般層というよりは音楽療法として医療従事者との共創相手でもある音楽家(クラシック系)、アート系(アートコミュニケーターなど)、行政の方々が大半を占めることも、事前情報から明らかに。

領域の違いを越えて共創を考えていけるよう、表現としてはフレンドリーに。「そう、こういう話だった」「ここ押さえておきたかった!」と、グラレコを通じて学びを深めてもらえるようなビジュアルを意識して臨んでいます。 

新チャレンジ、ノングラフィッカーとのタッグ

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紙面に載せて見ながら準備ができるよう、講演タイトルは事前メモを用意。

「グラフィッカー単独で全て描ききる」という準備をしつつ。少し新しいことにもチャレンジしてみたいなという考えがありました。

グラレコの現場では、グラフィッカーのサポートは別のグラフィッカーであることが多く、実践者もしくはビギナーが入ることがほとんどです。

しかし必ずしも描ける人(orグラフィック導入について詳しい人)がサポート役でなくても良いのでは?という考えもあり。
※この場合のノングラフィッカーは、非グラレコ実践者。「描かないけど実践を知っている」「導入のポイントや要点を知っている」ということも無い方を指すことにします。

そこで今回は、参加者や運営者側の領域(=アートや音楽、主に現代アート)に関心がある方にアシスタント的な役割を依頼しました。
※少なくとも自分よりは参加者寄りの視座があり、現在実践的に領域を学んでいる。

「参加者側と同じような関心がある場合、共感を持った粒度で、登壇者の話を捉えられるのでは?」という仮説検証でもありました。

▼基本的なメモ取りのスタンス

  • 事前情報は共有
  • 1要素につき、1付箋(1枚に複数要素を入れない)
  • サインペンで書く(ボールペン、シャーペンは使わない)
  • 話者が力を入れたところ(感情を込めたところ)をメモ
  • スライドには無いが話者、参加者が反応した(興が乗った)情報をメモ
  • 会場に感情(共感や驚きなど)が起きたところをメモ
  • 曖昧な情報、未発表としておく情報は削ぐ

また、メモはグラフィッカーの判断で描かれないことも多いことを事前にお伝えしていました。

グラフィッカー×ノングラフィッカーの面白さ

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グラレコの全体像

開始から1/3ぐらいに差し掛かるまでのところでは、比較的文章化されたメモが登場しました。当たり前なところでもあるんですが、話は時間の流れとともにどんどん流れて進みます。どこをどう留めるか?に書き手のフィルタが存在します。

グラフィッカーにもこのフィルタがあるので

  • グラフィッカーだけのフィルタが働く箇所
  • グラフィッカー&メモ役の、2段階フィルタが働く箇所

この両方が存在することに。

今回登壇された先生は、専門的な情報も話しつつ、軽妙な口調で笑いを起こしながら、資料には無い情報ももりだくさん。

残しておきたいところを事前資料からも把握しつつ、その「今ここの空間にしか流れなかったこと」を押さえたい。そこを理解してもらったキーワード的なメモがだんだんと増えていきます。

※面白くて残したかったけど、全体俯瞰すると重要ではない情報なんかもあった。そこは一旦書いて渡さずだったのか、たまたまか。

中盤以降、先生がかなりのスピードと情報量を盛り込んできていた段階では、この空間に作用したメモを積極的に拾いました。

終盤1/3はメモの感覚に慣れつつ、慣れたからこそのメモのまとめ方に「参加者としての解釈」に近い視座だと思える部分があり、そこが面白かったです。

そう、これ。こういうことが作用として起こるかなという期待がありました!

トライアルを通してのふりかえり

90分濃厚な話を描き、終了後には参加者の方々から「手元にスライド資料もあったけど、全部をすぐには飲み込めないから、これがあるとすごくわかりやすい」「ちょうど良く学び直せる(情報量)」「繋がりが見えた」という声をいただきました。

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グラフィックレコーディング前半

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グラフィックレコーディング後半

 直後にふりかえりができなかったので、改めて個人的にサクッとKPTを実施。抜粋するとこんな感じです。

・KEEP:文言の精度が高い人のメモは、手に取ったときの違和感が無くて非常にスムーズ。※こういうところが覿面にノイズになる性分なのでありがたい。
・KEEP:事前予習はやり込んで正解。やってやりすぎは無い。おかげで余裕に繋がった。
・KEEP:登壇者と直前に数分でも話ができたことで、ニュアンスや雰囲気を掴めた。

・PROBLEM:事前インプットと読み解きには共同作業できる時間を割きたかった。
・PROBLEM:構造が散りがち。一度構造硬めに振ってみるのも良い。
・PROBLEM:直後にふりかえりし忘れた!

・TRY:事前情報を元に個々に予習、グラフィック設計とメモの粒度を事前に検討。
・TRY:普段から学び、専門書も通読しているという人は、インプットの理解が速い。事前情報は下手に分かりやすくしようとせずに共有して、方向性を検討する方が良い。
TRY:個人としての視座は横に置かず、関心がある立場としてもっと色を残しても良いという点、もう少し押しておく。

 異分野コラボでは、普段の自分視座で描くグラフィックには無いものが生まれるかもしれないな、という芽を少し垣間見たグラレコでした。

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アートスタディルームの壁面、これオフィスに欲しい!

ソロ活動の場は柔軟に設計できる分、この新鮮さから新しい形を見つけられないかな、と一層興味を持った場になりました!