メタルは文学「ヘヴィ・トリップ-俺たち崖っぷち北欧メタル!-」
フィンランドの片田舎。村の大多数と相容れられず、地下室にこもりながらメタルバンドの練習ばかりを続けた12年。
村を行けば罵声を浴びる、陰キャのバンド「インペイルド・レクタム(肛門陥没)」
Died and Gone to Valhalla
「死して征く、ヴァルハラ」(選ばれし戦死者の塔)
ある種の社会風刺をはらみつつ、ひたすらメタルバンドが伝説を積み上げる。
しまいには「人生、時には後先考えずに行動することも必要」とパワーで圧してスパン!と終わる。
爽快で、見終えた人がみんな笑顔で帰っていく2020年最高の映画になりました。
後先考えない行動=まさにヴァルハラへの道を征く者の言葉。
どんな困難にも体当たりで立ち向かい、なぎ倒し、死して尚突き進み、たどり着く。
あんなにメンタル弱いのに!!泣けるわ!!
※主人公はライブで緊張のあまり歌い出しで盛大に吐くという。フロントマンに全く向かないシャイガイ。
異端児たちの叫び声
「自分たちはどうせ何もできないんだ」と諦めそうな、仕事や家庭環境や小さな村の社会に望みを見失いながら。
日々の鬱屈やフラストレーションを轟音のリフに載せて、高らかにデスヴォイスでシャウトする。
そんな異端児たちが開放される小さな地下室。
ずっとカバー曲しかやってなかったのに、オリジナルを作ろう!とした途端、向き合うこの現実。各々の現実から紡がれた曲は、血まみれの異端児の叫びそのもの。
なぜこんなにもメタルは文学的なのか
実際、北欧に限らずメタルは詩的で物語性が高くて。バンドマン自体も思慮深く(で、礼儀正しいことが多い)。
傷ついたり、耐え忍んだり、戦いに立ち向かうことを歌いながら、それでもなおシンフォニックさ追い求めたり。全てに裏切られ、または全てを捨て去って、死に往く自分を見つめてなお一粒の希望を残そうとする。退廃的な文学の要素が十分に入ってる。
きっと感性が豊かなゆえに感じる痛みも多く、痛みを知るからこそのダークなところを歌い。同じように痛みを感じる異端児たちを救うのかもしれない。
メタルにもV系にも、どこか弱い自分を奮い立たせ続ける魂みたいなものがある。
って、負けじ魂「シス」なんてものがあるんですね!
※国内メタル勢や作家さんに混じって、フィンランド大使が贈ったコメントより
映画作品として熱い要素が圧縮された90分
しっかし予告編であれだけ全編に漏れなく触れておきながら、それを全部上回ってくる作品で。
しばらく「良かった……笑……いやぁ、良かった……」しか言えず。
映画を見たというより、ライブ見た帰りのような心持ち。
彼らのジャンルは「終末シンフォニック・トナカイ粉砕・反キリスト・戦争推進メタル」と言うけれど。
音楽ジャンルというより、彼らそのものや!!
全部入ってたわ。漏れなく全部、正しく入ってた。
ある意味よく規制もされずに公開できたなぁ……(中国とイスラム圏からガチギレされても何も言えない)。
ライブハウスでの上映を切望
とりあえず、ライブハウスで爆音上映やって欲しいデス。
座席要らないので、ライブでアタマ振らせて!!
「ユンキー!!!!!」って叫ばせて!!
(そしてゲストMCにぜひTHE冠の冠くんを……)
で、夏はフェスでも上映しましょうよー。